卵巣アミノ酸取り込み量抑制を指標としたAGHアッセイ系(ガザミ)

Cui Z, Liu H, Lo TS, Chu KH.
Inhibitory effects of the androgenic gland on ovarian development in the mud crab Scylla paramamosain.
Comp Biochem Physiol A Mol Integr Physiol. 2005 Mar;140(3):343-8.

トゲノコギリガザミ(Scylla paramamosain)のAGHアッセイ系についての報告。メスからオスへの性転換を引き起こすandrogenic gland hormone (AGH)は、ダンゴムシ類だけで単離されており、他種甲殻類では存在は示唆されているものの、単離されたという報告はなく、ホモログ遺伝子の報告もない。ダンゴムシの性転換アッセイでは、未成熟なメス個体にサンプルを注射し、雄性生殖器が生えてくるのを確認するというもの。これは大変時間がかかり、新たなAGH単離の大きな障壁になっている。著者らは、卵巣の成熟段階を指標に用いてAGHアッセイ系の構築を試みた。まず、造雄腺のメスへの移植実験を行い、確かに卵巣の成熟が抑制されることを確認。次に、卵巣培養系に造雄腺抽出物を添加し、標識グルタミンの取り込み量を指標にして、アミノ酸取り込み量がdose-dependentに抑制されることを示している。ここで、ポジコンとしてJH-IIIが用いられているので驚いた。カニの卵巣にJHを添加すると、アミノ酸の取り込みが上昇するのは確かな現象らしい。ガザミの卵巣の成熟段階はI-VIの6段階に分類できるようだが、アッセイには適切な成熟段階の卵巣を用いるのがポイントらしい。stage IIIの卵巣を用いるのがよいらしいが、他のstageでは早すぎても遅すぎても難しいとか。In vitroのアッセイ系で短時間に活性を判定できれば、単離も現実的だ。この系では最大50%のアミノ酸取り込み抑制が見られている。しかし、アミノ酸取り込み抑制が、性転換現象にどのように関与しているのかはわからない。このアッセイ系で取られたものが、果たして性転換活性があるのかどうか。やはり最終的にはin vivoのアッセイ系によって証明せねばならないか。。しかし、この系でダンゴムシAGH様物質が単離できたら衝撃だなぁ・・・。