Roudier N, Lefebvre C, Legouis R.
CeVPS-27 is an Endosomal Protein Required for the Molting and the Endocytic Trafficking of the Low-Density Lipoprotein Receptor-Related Protein 1 in Caenorhabditis elegans.
Traffic. 2005 Aug;6(8):695-705.

Trafficという雑誌の論文は初めて読むかも。
膜輸送に関わるvps遺伝子の線虫オーソログCeVPS-27のmutant/RNAi animalがmolting defectsを示すことを示した論文。
CeVPS-27というのはHRS (hepatocyte growth factor-regulated tyrosine kinase substrate)のオーソログ。
知らない事だらけなので書き出しながら。
Class E vacuolar protein-sorting (Vps) proteins というのは、酵母において膜輸送に関与することが知られているタンパク質であり、VPSと呼ばれている。かなりの数があるらしく、Table1に挙げられているだけでも12個の遺伝子がある。それぞれ線虫、ヒトオーソログが同定されているが、それほど相同性は高くない。
VPSタンパク質の多くは、主にESCRT複合体を形成する。ESCRTというのはendosomal sorting complex required for transportの略で、まぁその名の通りの役割を担っているらしい。ESCRT-I、-II、-IIIが存在する。ESCRT-Iはユビキチン化タンパク質と結合し、ESCRT-IIを活性化してESCRT-IIIと結合し、最終的にはMVP (multivesicular body)にsortingされる。sortingされると、AAA-ATPaseがリクルートされて、分解されてしまう。Vps27pはESCRT複合体のエンドソームへのリクルートに関与するらしい。
筆者らは、線虫のvpsオーソログの欠損変異体やRNAiコンストラクトを作製して、その表現型解析をひたすら行ったらしい。その結果、CeVPS-27がL2/L3のmolting defectを示したので、その解析を行ったということらしい。
HRSは哺乳類細胞やDrosophilaで、既に様々な受容体のエンドサイトーシスに関与することが知られている。
HRSにはubiquitin-binding domain、coiled-coil domain、proline-rich domain、FYVE domain、PSAP motifなどがある。CeVPS-27も同様のドメイン構造を有するが、PSAP motifは存在しなかった。
筆者らはCeVPS-27のN末断片認識抗体、CeVPS-27::GFP、部分欠損ok579、tm0345、dsRNAコンストラクトを作製し、発現解析と表現型解析を行った。
CeVPSの発現は初期胚では全体に分布し、器官形成時には表皮、咽頭、腸など、apical junction marker-1 (AJM-1)が存在する細胞の近辺に局在するようになる。(AJM-1というのがよくわからない。google先生もほとんどヒットしない。。。)成虫になると咽頭生殖器官に局在する。
CeVPS-27::GFPがlysotrackerと共局在しないから、リソソームには局在がないという論法はwingless-lipophorinの論文と同じ。lysotrackerってそんなに優秀なマーカーなんですか。そうですか。写真を見てもすっきりしないものばかりですがね。
CeVPS-27はcoelomocytesというエンドソームに局在しているらしい。coelomocytesとは聞きなれないエンドソームだが、エンドサイトーシスした分子が特徴的に存在するもの?らしい。ref28参照。
CeVPS-27をRNAiでノックダウンすると、CeVPS-27の発現はほぼ完全に失われ、幼虫致死の表現型を示す。ok579 mutantはL2/L3ステージで成長が停止し、24時間以内に死んでしまう。ノマルスキって見ると、small vacuolesが顕著に増加していた。電顕では、おかしな形の膜構造物が多数見られた。2FYVE::GFP条件下でWTとCevps-27RNAiを比較すると、FYVEが発現している膜構造物が明らかに肥大していた。よって、おかしな膜構造物は肥大したエンドソームである可能性が高い。
autophagyへの影響を、autophagosomeに局在するLGG-1の局在で確かめた。Cevps-27RNAiでは明らかにLGG-1の局在がまばらになった。
molting defectの表現型解析。古い皮が脱げずに脱皮できない→食べれない→死ぬ。ということらしい。確かに古い表皮が分解されずに残っているのが見られる。この表現型はコレステロール欠損時にも生じるらしいので、コレステロール欠損条件下でCevps-27mutantを飼育すると、L2/L3より早く、L1/L2でmolting defectを示す。よって、CeVPS-27はコレステロールの(正しい)取り込みに関与してる可能性が示唆された。
また、この表現型はLRP-1 (low-density lipoprotein receptor related protein 1)の欠損変異体にも見られるらしいので、LRP-1の発現をWTとCevps-27RNAiで比較した。WTではほとんど検出されない程度のLRP-1だが、Cevps-27RNAiでは表皮と咽頭に強く発現が確認されるようになった。結果、LRP-1のエンドサイトーシスがおかしくなっているだろうと予想される。またこれにより、コレステロールの輸送もおかしくなっているであろうと予想される。

  • 感想

コレステロール欠乏での表現型を、どのように解釈すればいいのかで悩む。コレステロールの取り込みがおかしくなったと断定してよいのだろうか?逆に言えば、欠乏させなければ取り込むことができるということではないのか?
そこからいきなりLRP-1。局在を見ただけで関連づけられるのだろうか?膜輸送に関わる分子にmutationを入れたりノックダウンしたりしてるわけだから、輸送される分子は何でも乱れて当然では?
むぅ。期待したほどではなかったか。。
膜輸送や各種エンドソーム局在を主題にする論文は面白いが、解釈が難しい。